産業が発展していく上で必ず競争は起こります。
人材に関して言えば、正しい意識、環境さえ伴えば、競争から生まれるモチベーションの高さは誰しもが経験されていることだと思います。
その一方で、競争から敗れて去っていく人もいます。
私がチェーン店での駆け出し時代のこと。
店長クラスの人が辞める場合、その地位まで勝ち残ったのに、なぜ、そのポストを放り投げるのか。
「もったいない」「責任は?」という二つの視点からも大いに疑問でした。
実際に店長になって分かることですが、駆け出しの時では理解できなかった理由は沢山あります。
多くは人間関係や会社、自身の在り方だと思いますが、体調や年齢などの理由もありました。
理由はそれぞれでも、往々にして会社への不満が含まれていることが、あるように感じます。
あるチェーン店では、新卒で入社して10年以上経っても、店長ポストに届いていない状に、精神的にも耐えられず去っていくケースがありました。
自己責任の結果という面も多分にあるのですが、辞めた人がその後会社に対する恨みつらみを話すのを耳にする機会もあります。
自己責任だけで片づけられないケースがあります。
それはポジションがないために、昇進の機会に恵まれず辞めて行くことです。
予算ありきの給与と同様に、限られた器の中での昇進で、可能性ある人材が去っていく場合も多いのです。
逆説的ですが、能力や必要性がないから去っていくということが、正しいと言えるかもしれません。
ただ、これを正しいとするには、残った人が将来(大袈裟に言えば終生に渡って)幸せだと言える環境があったかに尽きると思います。
残った人もいつかは去って行く人という繰り返しでは、あまりに寂しいのではと感じます。
マズローの第2段階の安全欲求に相当するもの。
それは「長くこの企業で働いていけるか?」
独立開業のハードルが高いホール経営。50を過ぎても現役の人は、経営者の身内か役員まで上り詰めた一握りの人間です。
新卒採用する場合、「当社は50歳を過ぎても現役でやっている人は多くいます」
「新卒から定年まで働いた人が20%以上います」など謳うことは、大きな武器になると思います。
こうした前提には拡大が必要ですが、拡大がなくても活用は可能です。
例えば、店舗管理者から経理や警備、別部門への転籍などが考えられます。
この業界はつぶしが効かない。若いうちに金を貯めて、独立すべきだという意見もある意味真実でしょう。
厳しい状況に追い込まれているメーカーや販社の業界歴の長い人に「転職できるならどこが良いか?」と訊くと決まって挙がるのが「西陣さん」。
組合の存在や仕事のペース等の理由もありますが、一番の理由は「長く働けそうだから」。
キャリアというのは、段階を経ると年数では無く、実力、実績の要素が増えます。
パチンコ業界を志す多くの方々は、どんな企業なのかを見る上で、社風・人柄・規模・福利厚生・キャリアプラン等を自身のフィルターでチェックします。
彼らが新卒の場合は、40代からのプランにあまり説得力はなく、逆にそこを創っていけるのが貴方です、とする方が受けも良いのかもしれません。
それでも40代後半からのキャリアプランを明確に掲げる企業があれば、大いに得るものがあるのではないでしょうか。
質の高い競争を維持しながら、長く働き、分かち合える企業。
そんな企業が多く存在すれば、ホールの運営も少し変わってくるのではないでしょうか。
駆け出しの頃に、上司に怒られ諭された言葉を今も思い出します。
「うちがパチンコ屋と舐めるな。認めてもらう企業として一人一人が頑張らなければいかん」
「これだけ待遇が良くて、働く環境が良いのは、先輩方が頑張ってくれたからだ」
「お前らはいつまでもパチンコ屋の表まわりじゃ駄目だ。早く上に上がって来い」
「皆で頑張って良い店を作るだけじゃなく、業界の地位を上げるために頑張るんだ!」
あれから随分時は過ぎた。
上司が言った言葉や描いたであろう未来は、今の姿であったのだろうか。
歯を食いしばり頑張った人間は、どれくらい会社に残ったのか…。
先に挙げた多くの去って行った方々の恨み節は実は、ずっとあの会社に勤めたかったよ…の裏返しでもあるのです。
創業50年、60年を掲げた次の半世紀、退職の間際に、或いは死に行く前に、ここに勤めて良かったと、思える方が沢山いることを願って止みません。
拙文にこれまでのお付き合い有難うございました。
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