与えられたテーマは、今の業界が最も頭を抱えている難題――
「ノンユーザーにパチンコ・スロットをどう認識させるか」というものだった。
A氏はいくつものプランを提示し、ユーザー心理から逆算した広告戦略を提案した。しかし、結論としては「予算的に無理」の一言で却下された。
これが業界の現実だ。
自分たちでユーザーを減らしておきながら、肝心の「新規の入り口」に投資する気がない。その矛盾にA氏すら静かに驚いたという。
しかしAさんは、そこで話を終わらせなかった。予算をほとんどかけず、地味でありながら確実に効く古典的だが侮れない手法として、ひとつのアイデアを示した。
──それが、カレンダーだ。
ホール名が印刷されたカレンダーを毎日目にするだけで、人は自然と名前を覚える。
パチンコを思い出したとき、最初に頭に浮かぶ店舗名になる。
この「刷り込み」の効果は、実は侮れない。自動販売機のロゴ、引き出物のタオル、ボールペン──
人は目にするものを記憶の入り口にする。広告の基本だ。
Aさんはさらに踏み込んだ。
ただのスケジュール表のような無骨なものではなく、「飾りたくなるデザイン」を追求すべきだと。
パチンコ業界はアニメ版権機が主流で、キャラクター資産は豊富にある。
ならば、アニメファンが「お金を払ってでも欲しい」と思うカレンダーを作れない理由はない。
現在の遊技人口は発表する団体によって660万〜842万人と幅があるが、A氏は中間の750万人を基準にした。
その1%がカレンダーを購入すると考えると、約7万5000部。
このロットなら、制作面でも十分成立する。
デザインを共通化し、空欄部分にホール名だけ印刷すれば各社が利用できる。
しかし、ここで、また業界特有の“壁”が立ちはだかる。
こうした「地味だが確実に効く施策」は、派手さがないため意思決定者に響かない。
A氏が提出した複数プランが予算で却下されたように、業界には 「短期的・即効的な集客」以外に価値を見いださない体質 が根強くある。
しかし現実はどうだろうか。
新台も「入れた瞬間から抜く」という営業体質で新台効果が薄れ、告知も制限されている。
そんな中で唯一残された正攻法は、「ブランドを日常で思い出してもらう導線をつくること」なのではないか。
Aさんの提案は、決して奇抜でも目新しくもない。
むしろ基本中の基本であり、他業界なら当たり前に実行している「ブランド構築の入口」だ。
それすら「予算」で落とす業界は、もはや自分の足を自分で引っぱっているのではないか。
派手な広告はできない。イベントも打てない。
だからこそ地味な「刷り込み」が武器になる。
Aさんは最後にこう話した。
「毎日キャラクターを見ているだけで、自然とパチンコを思い出す。そういう入口はまだ作れる」
これは広告のプロからの警鐘だ。
業界はこのシンプルすぎる提案をどう受け止めるのか。
受け止める気があるのか。
そこに未来がかかっている。
今年は時期的に遅いが来年に向けて準備してはどうか。
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