北国の強烈な季節風は、たとえ雪が降らなくとも積もった雪を舞い上げ、地吹雪となって、すべてのものに襲いかかる。吹きさらしの大地で、馬はひたすらに耐える。長く分厚い体毛と、蓄えた脂肪、そして頑強な脚。それだけを頼りに、わずかな草をはみ、ただ耐える。母馬たちは胎内に仔を宿していても。やがて来るだろう喜びの春を夢見て……ヤフーより抜粋
会いたかった。寒立馬に
「今日は特別記念物を案内しますよ」と連れられて行かれたところが本州の最北端の尻屋崎だった。
あれは関西では春先で、まだ桜が7分咲きの3月下頃。
青森の市街地ではまだ、つぼみ桜だった。
下北の最北端には春が2カ月遅れでやってくるので、まだ、真冬があけた頃だった。
雪国を語れば負けん口を叩いていた自分としては、この時ばかりは口元が固まった。
こんな季節の落差に絶句した。
その頃はしばらく雪国を避けるかのように、南下していていた。
岡山、四国、広島と・・・それと大分。鳥取、島根もよく行った。
そんな時に青森の紹介話があり、何の躊躇もなく、すぐ現地に若いスタッフを派遣して現地調査をさせた。
その若いスタッフの報告はいつも否定的だった。
やがて猛吹雪で交通や市場動向は滞って、毛細血管まで寒さ凍った。
彼は、体裁をたてに本音を言わずに、関西一帯の転任を主張した。計数計算やパソコンのシステム構築や弁も立ちましたがそれまで。
関西から遥々遠方で、吹雪で、周辺には何もないし、歩いている人もあまり見かけない。
でっかい図体してホームシックになったわけだ。
それで、わたし自らこの地に投身することを約束した。
それでも、気の緩みや決意の甘さなどがある時には、この「寒立馬」に会いに吹雪に向かってワイパー全開で走った。
会いたかった。本当に!寒立馬に!!・・・
あれから、まもなく成績は雪が降る度に上がって行った。
八代亜紀ではないが「雪!? ゆき~ふれふれ~もっとふれ・・・」で猛吹雪の日が大好きになった。
それも連日やむことなく降り続ける「地吹雪」だ。
突風を誘い込んで舞う、地吹雪のため視界は2~3mだが、襲いかかるコレに粛々とむかっていくのがいい。
苦しい店の艱難を乗り越えるのといっしょの気持ちだ。
寒立馬研修会
最北端の崖っぷちで、オホーツクから容赦なく叩きつける猛吹雪にも、微動だにせず堪えている。
そんな光景をしばらく息を殺して見守るようにジッと見つめていた。
そんな毅然さに胸が熱くなって・・・
「俺も負けないよ。頑張るから・・・」と誓っていた。
寒立馬はいつも、わたしの脳裏に深く刻み込まれていた。
酷寒のなかで耐え凌ぐ寒立馬のように・・・「負けないよ!」と言い聞かせていた。
いや、きっと、これは紛れもない寒立馬との約束だった。
真夏なのに8月を通しても、30度を超える日が1~2回あるかないかの地帯。
なにも最北端と言うだけではなく、オホーツク海からこの時期になると、南下してくる冷たいか風がしんしんと沁み渡ってくる。
だから、真夏の霧が濃厚で数メートル先が見えないので、方向指示器を点滅させながら走ることもよくある。
その名は「ヤマセ」・・・といって、ヤマセが通り過ぎたら、もう秋!
この地方の夏はあっという間に去って行く。
紅葉も一足早く、京都の哲学の道や日光のいろは坂よりは、1カ月も先にやって来て幻想的な世界を繰り広げていた。
待ち焦がれた春がやっと来て夏がきたと思っていたら、ヤマセが降りはじめると、行きかう人々の表情は、どこか淋しく孤独っぽくも感じた。
夏盛んな中旬頃から冷風が吹いて穀物に被害をあたえては、僻地の貧民を困らせている。
この風情にして北国の最北端の、断崖絶壁からかすか向こうに見える函館湾の見晴らしは、青森出身の淡谷のり子の「窓をあければ港が見る~・・・」
メリケン波止場の景色を重ねていた。
小林多喜二の蟹工船なんかは、この地から遥か数万里の荒波越えて先だが、少し気になって水平線の遥か向こうまで眺めていた。
最北端のさらに向こうに何があるのだろうと・・・
カムチャカ半島沖で奴隷のような強制労働を虐げられる風景が連鎖してくる。
真夏にも容赦なく噴き続ける、「ヤマセ」の降る時は気温も上がらず、寒気がする。毛穴に噴霧が凍みこむようでやまない。
でも、このヤマセが去ると、青森賢人の「じょっぱり」気質が、長き日々の豪雪を耐え抜いて行く。そして、人情豊かな東北の方言が凍りついた体を溶かしてくれる。
だから私は、雪国を語る時に、必ずといっていうことがある。
「雪はとってもあったいんですよ」と。
雪は人々の心の中に生きている。するとみなさん、キョ~トンしている(苦笑)
青森の人は有言実行のひとが多く、駆け引きじみたヤリトリを見かけることが少ない。
ちょっとした言い訳や弁解がましいことばかりを言ったり、苦労を避けて通る軟弱な人材は「寒立馬研修会」にぶち込んだら、どうでしょうか(笑)
成績をあげるには自己改革を避けては通れないことを吹雪の青森はちゃんと教えてくれる。
つづく
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(´・ω・`)…。
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