そのため、メーカーが生き残りを図るためには、高額の機械を販売するしか道は残されていない。つまり、少ない台数でも利益が確保できるよう、1台あたりの価格を引き上げざるを得ない状況にある。
その結果、ホール側にとっては、機械購入にかかる負担がかつてないほど重くのしかかっている。新台入替ペースを落とさざるを得ない状況にあり、従来のような頻繁な新台導入による集客戦略は、もはや現実的ではなくなってきている。
したがって、ホールが高コスト体質からの脱却を図るには、機械の買い控え、ならびに導入した機械をいかに長期間使用するかという視点が不可欠となる。
一方で、出玉を削るという従来のコスト削減策は、すでに限界に達している。出玉を抑えすぎれば、不満が爆発して、客離れが一気に加速する。実際、出玉感の乏しい台に対する客の反応は厳しく、SNSや口コミを通じてネガティブな情報が広がるリスクもある。
これ以上の出玉削減はホールの自滅行為に等しく、現実的な手段とは言えない。
では、どこにコスト削減の余地があるのか。それは明確に「人件費」といえる。各台計数機の導入が進み、従業員がホール内を巡回して玉箱を運ぶ必要がなくなった。また、スマート遊技機の普及によって、計数だけでなく持ち玉管理や貸出・精算までがカードで行えるようになり、接客業務そのものの必要性が減少している。表周りの人数を大幅に削減しても、店舗運営に支障をきたすことはなくなった。
今後の焦点となるのは、店舗運営の中核である「店長職」の合理化である。現在は1店舗に1名の店長が配置されているが、業務の自動化・集約化が進めば、1人の店長が2店舗、あるいはそれ以上を兼任することも可能になる。とりわけ、釘調整という特殊技能が不要になれば、現場任せの運営から脱却できる。
釘調整を不要とするには、プラスチック製の固定釘を採用し、設定によって出玉バランスを制御するスマート機の普及が不可欠となる。このような仕様に切り替われば、ホールは釘師や調整技術者への技能手当を支払う必要がなくなる上に、設定管理という業務を本社側で一括して遠隔操作で行えるようになる。
さらに近未来を見据えると、完全スマート遊技機の時代にはAIの導入が進み、各台の稼働状況や収支データをリアルタイムで分析しながら、最適な設定を自動で投入するシステムが実現する。この段階に至れば、本部の設定担当者すら不要となり、システムが稼働最適化を行うことで、人件費を限界まで削減することが可能となる。
こうして、人件費の大幅な圧縮が現実となる時代まで生き残ることができたホールには、確実に明るい未来が待っている。経費構造がスリム化され、無駄のない運営が可能となることで、安定した利益を上げることができる。パチンコ業界が真の意味で次のステージへと進むには、このような抜本的な合理化が避けて通れないだろう。
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