普通なら、拾った人は駅員か交番に届けるのが筋だ。しかし、この拾い主はそうしなかった。
理由は簡単だった。
ロック画面に表示されていた壁紙が、なんと名刺そのものだったのだ。会社名、部署名、氏名、住所、電話番号までが明記されており、持ち主の身元は一目瞭然。拾い主はその情報を頼りに、直接会社へ電話をかけた。
応対に出た社員に事情を説明すると、暫くして、落とし主が電話口に出た。
驚きと安堵の声の後、受け取りの段取りがすぐに決まり、スマホはその日のうちに無事、本人の手に戻った。
持ち主は遊技機メーカーに勤める人物で、謝礼として2万円と、自社キャラクターのグッズを手渡したという。拾い主は「まさか壁紙が名刺になっているとは」と感心しつつも、「これなら交番よりも早く返せる」と感じたそうだ。
スマホのロック画面を名刺にするという発想は、意外に実用的である。紛失時、第三者が持ち主を特定しやすく、届け出の手間を省ける。ただし、ケータイ番号などの個人情報がむき出しになるリスクもある。SNSに紐づくスマホである以上、悪意ある人物の手に渡れば、情報漏洩の危険性もある。
とはいえ、今回のように善意が生まれるケースもある。拾い主がすぐに連絡し、落とし主が誠意をもって感謝を示す。そのやりとりは本来の日本人の姿だ。
でも、本来はスマホを落とさない工夫こそが一番の防御策だ。特にポケットから滑り落ちたり、カバンの隙間に入れたつもりが落としていることもある。最近はネックホルダーやショルダーストラップ型のスマホケースが人気だが、これが意外に有効である。首から下げておけば、駅の改札をくぐる時も落下の心配がない。
テクノロジーがいくら進化しても、人間の「うっかり」はなくなることはない。むしろ、便利になればなるほど、油断も生まれる。
そんな中で、名刺壁紙という一工夫が、思いがけず人と人をつなげた心温まるエピソードだった。
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