ある日、新米の精神科医がパチンコ業界の関係者に唐突な質問を投げかけた。初めて受け持つその患者は、おカネが入ればその日のうちにパチンコにつぎ込む生活を何年も続けていたのだ。パチンコ依存症だった。
業界人は「「1回も大当たりしなければ、計算上は1時間で2万400円は消えますよ。でも、普通はその間に大当たりがきます。それでも1時間だと1万2000円くらいは使います。下手すると1日で10万円が吹っ飛ぶこともありますけどね」と答えた。
これを聞いた医師は、「パチンコって、こんなにもおカネがかかるものなのか!」と驚愕した。
連チャンで大勝ちした経験が忘れられずに、それを求めてまたパチンコ店へと足を運ぶ。この「射幸性」こそがパチンコ業界を支えてきた根本的な要素なのだ。
パチンコ業界は、射幸性を上げることで大きな成長を遂げてきた。射幸性とは、簡単に言えば「一発逆転のチャンス」に賭けることを指す。客に「次こそは」と期待させることで、プレイを継続させていることができる。これがパチンコ営業の神髄でもあり、問題点でもある。
しかし、業界自身がこの射幸性に依存してきた結果、パチンコ産業は衰退に突き進んでいる。
建前では「健全な遊技」を目指さなければいけないと感じているもの、射幸性を下げれば客足が遠のくという恐怖はぬぐえない。このジレンマが、業界の変革を妨げているのだ。
では、パチンコ業界がこのジレンマから抜け出すためにはどうすればよいの? その鍵は「射幸性に頼らない機械作り」である。
それは、「ゲームとしての楽しさ」に重点を置くことだ。客が大金を使わずとも満足感を得られるようなものでなければならない。
例えば、今のように「大当たり=大金」という構図ではなく、「今日はちょっと贅沢なディナーに行けるくらいの勝ちでいい」という具合だ。勝ち額を減らしつつも、ゲーム性を充実すれば、パチンコをギャンブルとしてではなく、ゲームとして楽しむ新たなファンが増えることが期待できる。
そのためには、まずホール経営者やプレイヤー自身の意識改革も必要だ。 パチンコ=大金をかけて勝負するもの、という固定観念を捨て、もっと気軽に楽しめる娯楽としての普及を進めていくことが重要だ。結果的に多くのプレイヤーが少額で長く遊べるようになれば、業界全体としても薄利多売のビジネスモデルが成立する。
パチンコ業界は、射幸性に依存するビジネスモデルから脱却し、パチンコをしない93%に向けたゲーム性を重視した新たな遊技機の開発が求められているのだ。
新米の精神科医が投げかけた一つの質問から始まった議論だが、結論は明白だ。パチンコは勝てるかどうかではなく、いかに楽しめるかだ。
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