そんな状況下で、50代の女性が求人に応募してきた。履歴書を見た店長の目が飛び出る。なぜなら、その女性が薬剤師の資格を持っていたからだ。薬剤師がなぜホールに?と店長は頭をひねるが、話を聞いて納得した。
この女性、薬剤師同士で結婚し、離婚後は一度薬剤師を休業。再度薬剤師として復帰する予定だが、ひとまずパートタイムで、ホールで働きたいということで応募してきたのだ。
店長はこの予想外の展開を社長に報告した。すると社長が「俺も会いたい」と言い出した。なぜそんなに興味を持ったのかと言えば、実は閉店危機の店舗に対し、以前ドラッグストアーチェーンから「その建物を貸してほしい」というオファーがあったからだ。まだドラッグストア需要がある地域であることを知った社長は、他人に貸すくらいなら自分で薬局をやった方がいいのでは?と急にアイデアが閃いたのだ。
「実は前々から薬局をやろうと思っていた」と社長は面談の際、堂々と張ったりをかました。そして「ついてはその責任者になってほしい」と持ちかけ、その場で女性を採用した。
他の社員には内緒で、時給2000円という破格の待遇を約束した。この女性が応募してこなければ、薬局経営なんて微塵も考えなかったというのが本音だろう。
しかし、社長が薬局経営に踏み切るのはいいが、薬局の運営は全くの門外漢。そこで頼ったのが、ドラッグ業界のコンサルだった。
コンサルは廃業予定の店舗について、サイズ的にはちょうどいいが建物の寿命はあと15年と判断。また、現在のドラッグストア事情について「薬は通販が主流となり、今では薬だけでなく、食料品まで一気通貫で扱うことで客が1カ所で買い物を済ませられるようになっている」と説明した。
ここで第三者的にも一つの疑問が浮かぶ。果たして、この激しいドラッグストア業界の中で、個人経営の薬局が生き残れるのだろうか?
コンサルは社長に「なぜ、パチンコ業界が儲かっているときに多角化しなかったのか」と逆質問を投げかけた。
その答えは単純明快だった。
社長曰く「パチンコが儲かっていた時代には、他の業界の利益がバカらしく見えたから」というわけだ。利益が薄い商売より、儲かる商売に力が入るのは当然の話である。
パチンコが衰退した理由についてコンサルは「客がパチンコに飽きたのではなく、ホールが玉を出さなくなったからだ」とズバリ指摘。これには社長も二の句が継げなかった。
社長は「機械代が20万円だったのが50万円に跳ね上がったから」と反論したが、コンサルは「商売人にその言い訳は通用しない」と一蹴した。
さらに、等価交換が主流となった現状を指摘し、「ギャンブラーしか来ない業界にしたのは業界の責任だ」と断罪。ホールは朝6時から集客するような発想が足りないと続けた。
社長が「昔はモーニングサービスをやっていたが、警察の規制で廃止された」と言い訳すると、コンサルは「警察に規制されない方法で集客する発想を持たなければならない。出勤前に1時間でもパチンコを打ってもらうためのアイデアを考えるのが商売の楽しさだ。パチンコ業界はその辺りから発想を変える必要がある」と薬局よりもパチンコ業界へのアドバイスに熱が入ったのであった。
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