そのホール企業は社員の福利厚生の一環として、新作ビデオは100円、旧作は50円と従業員割引価格で貸し出していた。対象は社員・アルバイト全員だった。
ところが、責任者の息子から社長へ、ホール従業員の延滞率が一般客に比べて非常に多い、という報告があった。ちなみに延滞料金は新作が30円、旧作が10円だった。
福利厚生の一環で安く貸し出してもらえていることに甘えているのかと思われた。特に新作は借りたいお客さんが一杯いるので、延滞料が安いからと延滞すると一般のお客さんに迷惑をかけると共に、会社に売り上げ損失を与えることにもなる。
延滞する従業員は計画性がなく、会社にマイナスになる。
この時、社長は人事考課に「延滞」を付け加え、延滞の多い従業員は副主任以上には上げないことにした。
ホール以外にも飲食店も経営しているが、これを手始めに独自の人事考課を考えるようになった。
例えば、役職者なら箸の持ち方を観察した。正しい箸の持ち方をしているかどうかは、釘調整のち密さに現れた。
魚の食べ方は骨だけ残してきれいに食べるか、天丼のご飯をきれい一粒も残さないで食べるか。
それは真面目で堅実さのバロメーターとなった。アルバイトから社員へ引き上げる時の評価になった。そういう人材は積極的に役職者へ上げて行った。
その反面、そういう性格の人たちは奇想天外な発想力はないが、新製品を開発するような会社ではないので、そういう人材は求めなかった。
時は流れる。
独自の人事考課でやってきた結果、離職率が低いことがこのホール企業の特徴だ。
社長は新たなビッグビジネスを温めている。それは人の心を読むビッグデータの活用により採用方法だ。
例えば、ビッグデータの中には「キャンセル」というカテゴリーがある。ホテルや病院、飲食店など予約しながらドタキャンを繰り返す人は、キャンセルされた側に多大な迷惑をかけていることになる。
また、運転が荒いとか、丁寧だとかもビッグデータから事前に分かれば、新たにドライバーを採用する運輸会社にとってもありがたい。
図書館には常習的延滞者のデータもある。延滞料が発生しないので特に人間性が分かる。
面接では計画性がなく、だらしない人間かどうかは見た目だけでは判断できない。そこで採用する前に人の心を読むビッグデータを活用する。多方面のビッグデータとAIを組み合わせることで問題を起こす人は、採用しなければ将来会社に与える損害を未然に防ぐことができる。
この発想の原点がレンタルビデオの延滞だった。
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