違和感が確信に変わったのは、金銭管理の手順を忘れたり、ホールコンの扱い方が分からなくなったことだ。
店長の年齢は51歳だった。
部下の報告を聞いた専務が店長の行動を確認した結果、「店長、おかしいぞ!」。すぐに病院へ連れて行ってCT検査を行った。
診断結果は若年性アルツハイマーだった。
65歳未満で発症した認知症のことを「若年性認知症」と呼ぶようだ。50歳からの有病率が高くなり始め、特に55歳〜64歳が突出してくる。原因別では、1位はアルツハイマー型認知症が半数を超え52.6%、次に脳血管性認知症が17.1%となっている。
症状としては、同じことを繰り返し聞く、人の名前や約束を忘れるようになる、最近の出来事も思い出せない、ガスの火を消し忘れる。
他人が異変に気づくのは、今回の店長のケースのように、今までできていたことができなくなることだ。金銭管理やコンピュータが扱えなくなることは決定的だった。
ただ、日常会話は普通に行えた。酒、たばこもやらない真面目な性格だった。
店長は離婚していた。実家は新潟で米農家をやっていた。両親に報告して、上京してもらった。病院で先生から説明を受けた。
次男が「家族がいるところで治療させます。こっちで面倒見ます」と申し出た。店長はそのまま退職して新潟へ帰った。それが去年11月のことだった。
毎年、新米のシーズンになると店長の実家がホールへ30kgのコシヒカリを4俵も送ってくれていた。従業員で分けて食べていたが、これが無農薬栽培で「甘さや粘りがあって本当に美味しい」と大評判だった。
去年も新米が送られてきたが、店長が辞めれば、今後、送られてこなくなるので、今年は購入することにした。
そこで社長が閃いた。
こんな美味しいおコメをホールの顧客にも味わってもらうために、景品にすることを思いついた。景品もいいが、総付け景品で2合分に小分けして配るのもいい、と活用方法が膨らんでいる。
若年性アルツハイマーという禍はあったが、元店長の実家のおコメを景品にすることで福となして欲しいものだ。
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