ところが、ある時期から異変が起きた。清掃スタッフが「女子トイレの予備のトイレットペーパーがすぐになくなる」と報告してきたのだ。通常なら1日では消費しきれないはずの3個が、開店から数時間で空になることもある。
調査の結果、どうやらトイレットペーパーが“使用”されているのではなく、持ち帰られている可能性が高かった。
「たかがトイレットペーパー、されどトイレットペーパー」
店長はこの事態を単なる備品の消失と見過ごすことができなかった。問題は経費よりも、ルールと秩序の乱れにある。
そこで、店長はある策を思いつく。
ある朝、スタッフ全員が集まる朝礼で店長はこう宣言した。
「対策として、トイレットペーパーは一つずつ個包装のものに変えます。その中に、ダイソーで購入した格安のエアタグを仕込みます。万が一持ち帰られた場合、位置情報から追跡できるようにします。もっとも、窃盗として警察に突き出すようなことはしません。ただ一言、“二度とやらないでください”と注意するだけです」
スタッフの間にざわめきが走った。だが、実行に移された対策は、思った以上に効果を発揮した。エアタグが示す位置情報をもとに、10人以上の“常連”がトイレットペーパーを持ち帰っていることが明らかになったのだ。
声を掛けられた常連客は「トイレットペーパーなんか取っていない」とシラを切る人が少なくなかったが、エアタグのことを説明して理解してもらった。
やがて店長は、この一件をオーナーに報告した。ところが、返ってきたのは思いがけない叱責だった。
「バカなことをするな。そんなことで客が来なくなったらどうする。トイレットペーパーくらい、必要経費として見ておけ」
店長にしてみれば、金額の問題ではなかった。不正を放置することが、店全体のモラルを蝕む。誰かがルールを破れば、次第に他の客にも影響が広がっていく――そう考えての行動だった。
しかし、オーナーはあくまで“売上”と“客足”を最優先に考えていた。両者の間に溝は埋まらなかった。
結局、オーナーの指示で、トイレットペーパーの予備はこれまでの3個から、一気に12ロールに増やされた。防犯対策も中止され、エアタグ作戦はお蔵入りとなった。
店長は静かに肩を落とした。彼にとっては、トイレットペーパー以上の何かが失われたように感じられた。ルールを守ることの大切さ、正しさを信じて行動したはずなのに、その信念は「やりすぎ」として切り捨てられた。
サービス業における“正義”とは何か――。
客の満足を守ることか。秩序を守ることか。
それは今も、店長の胸の中で答えが出ないままである。
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事後報告(勝手に判断した結果を報告される)は、組織においては罪だ。
決裁権も無いのに勝手に動かれると本当に迷惑だな。
決裁権があるならいいけど。
最近では売上のノルマ(責任)の無い店長が多い。
責任感が無い人の判断はとても怖い。
信念はわかるが、その信念が正しいかどうかは確認すべき。
オーナーさんの気持ちめっちゃ分かる。
ピンバック: う〜ん
しかも上質なトイレットペーパー。
お客様は盗んでいる意識は無い。
「一日1個もらえる」というのが暗黙の了解、ルールであった。
毎日来るような常連客は毎日1個持って帰る。
自宅で使う→余ったら知人に配る→口コミで広がる…を狙った戦略だった。
トイレットペーパーの原価なんてしれている。
その原価で広告宣伝出来るなら安いもんだ…と。
無料で配っているのではない。勝手に持っていかれちゃったのだからしょうがない…という戦略だった。
なかなかのやり手だな…と思ったな。笑
ピンバック: 60.108.238.61
開店直後に大勢の主婦がトイレに押しかけて、
大きめの入れ物に多量のトイレットペーパーを入れて、
パチンコはせず、そのまま直帰になるかも。
ピンバック: トクメイ
ピンバック: 通りすがりの風来坊
一般的な感覚なら店長のいうほうが正しい。自分ならこんなオーナーの下では働かない。
ピンバック: 店長かわいそうに
パチンコを打つ人の民度を低いままにしておくことは新規客を遠ざける要因の一つだと思います。
ピンバック: crazydoctor
そりゃ自浄作用なんか夢のまた夢ですわ。
一事が万事。
自浄どころか自然汚濁(笑)みたいな考えです。
こんな業界に長くいたら人間としてダメになるのは理解できます。
だから正義の属性が高い人はストレス抱えるから辞める人が多いんでしょうね。
時代に乗り遅れるとこうなる、みたいな例として後世に語り継がれると面白いと思いますよ。
ピンバック: 通行人
最初人としてどうなのよ、と考えたが。独り暮らしの老人が自分の生活する分として懐にいれてしまう光景を考え、その老人からしてみれば「毎日12ロールくらい買えるくらいのお金を使っている」なんて事実があるとするならば。
やりきれない想いしかしない。
ただ人間が犯罪者になっただけの話なのだから同情の余地はないのだが。
ピンバック: 通りがかり
音声や画像じゃないから許されるってものではない気がします。
それも店長の独断だとしたらなおさら。
「あの店は女子トイレの個室に電子機器を隠して設置している」などと、
話が広まったらどうするのかな。
ピンバック: 疲れ目
武運拙く散財したお客が、トイレットペーパーを盗み、スキをついて一矢報いた気分になればよし。
そんな時に、トイレットペーパーに追跡機器が入っているのを気付かれたら、お客はここまで管理していたのかと、危機感を募らせ、パチンコという趣味をやめてしまうかもしれません。
窮鼠猫を噛むとの言葉もあります。
わざと逃げ道やスキを用意してあげることがお互いのためなのです
ピンバック: せんべい
店内の状況は、お客の気持ちを無視してますね。
ピンバック: 牛丼さんへ
このホールは盗難という認識なんだと。そりゃ、そうか。しかしそんなことする人実際にいるんだって驚いたが。
ピンバック: とある弱小ホールの話