「何かやらないといけない。最後の最後まで、お客様に喜んでいただくために頑張りたい」
その想いが強すぎるのか、ミーティングを重ねるもみんなでやることにこだわり、何も決められない。
それが苛立ちとなって、スタッフ全員の表情がますます暗くなっていった。
店長はスタッフを支援するのが最後の仕事だと決めて、スタッフからの報告を待っていた。
「自分自身の長所や得意なことを活かしてお客様に喜んでいただき、感謝の思いを伝えてほしい。自分なりの有終の美を飾ってほしい」
私自身も、そのことを強く想っていた。
「今までやってきたことをよく考えて、少し磨いて可能な限り実行するだけ。自分自身のやりたいことを感謝の想いを込めて全てやりきってほしい…」
ここで、私たちが営業で取り組んできたことに少し触れておきたい。
小規模店(約250台)だからこそ、やれることを今まで考えてきた。
「お客様ノート(似顔絵入り)」を作成して、お客様とのやりとり(日常会話などを含む)を全て書き込み共有した。
そのノートを最大限に活かすことによって、出来る限り常連様はお名前でお声掛けできるよう心掛けた。
賞品カウンターではお客様の声を活かし、お客様にとって価値のある賞品を多数取り揃えることを目指した。
ホールではお客様の苦情や要望の把握と迅速な対応、設備や遊技機トラブルの処理対応に役立てた。
ここで話を戻そう。
最初は見守っていたのだが、現状打開のため、閉店1カ月前にS主任にこう声を掛けてみた。
「お茶を配布してくれないかな?」
「やっていいですか!では、今週末から配布します!!」
ただの湯茶サービスだが、千利休に扮してコース巡回してご案内する姿は、お客様の笑いを誘うのだ。
さらにS主任に聞いてみた。
「S主任の得意なことって何かある?」
「今はやっていませんが書道八段です。師範の手前までいきました!」
私は咄嗟に言った。
「その特技を活かして、お客様と一緒にお正月に書き初めしよう!」
S主任は快諾してくれた。
これを契機にスタッフは思い思いに感謝の気持ちを込めてやりたいことを進める準備に入った。
スタッフM君は店舗の歌をアカペラで作り上げる。
スタッフK君は年末年始の競馬予想をお客様と行う。
T主任は早朝から道の駅まで新鮮野菜を仕入れに行ったり、お客様からリクエストされた賞品を仕入れる。
それぞれの目標が決まった。
あとはやりきることだけだ。
店長はシフト調整に余念がなかった。この頃、また一人の派遣スタッフが退店した。
彼もまたホール業務の核を担っていたスタッフの一人だった。
閉店まで約20日。
残された要員はたったの7名だった。
つづく

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250台クラスのホールが“人間味あふれる”営業活動をやってもなかなか生き残れない?
資本力が物言う競争社会では小規模なモノの淘汰傾向はいかんともしがたい現実。
只、有終の美を飾ろうと精一杯、奮闘努力するスタッフさんたちが居る。
そこには、良くも悪しくも、何らかの“ご縁”がある。
職場の人との縁、お客さまとの縁、そんな“ご縁”を大切にして欲しい気がします。
小才は縁に気づかず
中才は縁を生かさず
大才は袖すり合った縁も生かす 【柳生家 家訓】
そして、成功者が「成幸者」とは限らない。
私はそう思っています。
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次に繋がげる事が出来れば幸いですね
生涯同じ職場で同じ場所で仕事出来る人は少数です
最後だから色々言えたり出来たり割り切って仕事出来る場合があります
その時私は思います最初からやれば良かった
難しい事ですが最初から全力を出したいですね
とあるドラマで聞いた「明日やろうはバカ野郎」
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