場所は大阪でも京都でもない関西圏のエリア。かつては複数のホールが鎬を削っていたが、市場縮小によって次々と淘汰され、現在生き残っているのは、このホールと大手チェーンの2社だけとなった。
いわば地域の市場を二分している状態である。
しかも、このホールは高稼働を維持し、安定的に黒字を確保している。業界全体が苦戦する中では、むしろ「勝ち組」と呼べる店舗だ。
しかし、オーナーの心には常に一抹の不安がある。それは、競合する大手チェーンの存在だ。
現在は互角に市場を分け合っているが、もし大手が今以上に増台し、店舗規模を拡大してきたらどうなるのか。
資本力、設備投資力、広告宣伝力では大手には敵わない。大手が本気でシェアを取りに来た場合、今まで通ってくれていた常連客が一気に流れる可能性もある。
その不安を解消するため、オーナーは市場調査会社へ依頼を行った。
調査会社が出した答えは、決して楽観できるものではなかった。
「競合店が現在の1.5倍規模に増床した場合、間違いなく大きな打撃を受ける」
もちろん、これは仮定の話である。しかし、数字として突き付けられたことで、オーナーの不安はさらに大きくなった。
現在の店舗は、建て替えをしなくてもあと20年は営業できる。今すぐ経営が行き詰まっているわけではない。
それでも悩みは尽きない。
10年後、20年後に市場環境がどう変化しているのか……。
そこで次に浮上した選択肢が「売却」である。
調査会社からも「今なら買い手が付く可能性が高い。しかし、このタイミングを逃せば売却自体が難しくなる可能性がある」とアドバイスされた。
経営者にとって、繁盛している店を手放す決断ほど難しいものはない。しかし、企業経営では「まだ儲かっている時に売る」という判断も重要になる。
実際、日本海側の地方都市から新たな可能性を求め、関東や関西などへ進出するホール企業もある。地元金融機関にとって有望なホール企業であれば、融資にも積極的になる。
つい最近、筆者が知っている大阪のホール企業が、地方のホール企業へ6店舗売却したことには驚かされた。社員教育も熱心な会社だっただけになおさらだ。
つまり、経営判断には「攻め」と「撤退」の両方の選択肢がある。
最も避けなければならないのは、決断のタイミングを逃すことだ。
パチンコ業界では、かつて繁盛していた店舗が、市場縮小と競争激化によって売却すら難しくなった例は少なくない。
「まだ売れる時に売る」
これは敗北ではなく、経営者として未来を見据えた戦略的な判断である。
今、虎の子の1店舗を守り続けるのか。それとも価値が高いうちに売却して、次のステージへ進むのか。勝ち残ったホールだからこそ、最後に問われるのは営業力ではなく、経営者の決断力なのかもしれない。
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まだいけるとおもうなら好きにしたらいい。
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