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遅刻魔を更生させた、たった一つの仕組み

A君は職場では評価の高い人材だった。勤務態度は真面目で、誰もが敬遠するような仕事にも率先して取り組む。文句を言わず、空気も読める。いわゆる「使える社員」だった。

しかし、そんなA君には一つだけ、どうしても看過できない欠点があった。それが遅刻癖だった。

年間で数えると20回あまり。月に1〜2回は必ず遅刻し、その遅れが10分や20分ではなく、1〜2時間に及ぶことも珍しくなかった。早番で朝起きられないのかと思えば、遅番でも平然と遅れてくる。単なる寝坊ではなさそうだった。

A君は自宅からホールまで自転車通勤をしていた。遅刻時の言い訳にはいくつかの定番があった。最も多かったのは「自転車のタイヤがパンクした」というものだ。時折、「チェーンの調子が悪くて」といったバリエーションも加わる。自転車ネタが尽きると、次は下痢などの体調不良が理由として登場した。

さすがに店長も内心では疑っていたが、「それは嘘だろう」と指摘するのは今のご時世では難しい。下手すればパワハラになる可能性もある。結局、A君の申告を信じるしかなかった。

店長はA君の遅刻癖を把握していたものの、これまでオーナーには詳しく報告していなかった。しかし、ある日ついに相談することになる。するとオーナーは意外にも感情的になることなく、シンプルな対策を指示した。

「遅刻する時は、必ず私に直接電話をさせなさい」

まず、頻発していたパンク対策として、会社の経費でパンクしにくいタイヤに交換した。そして体調不良の場合も、必ずオーナー本人に電話で報告することを条件に、遅刻を認めることにした。

結果は劇的だった。A君の遅刻は目に見えて減ったのである。理由は単純だ。言い訳そのものではなく、「誰に報告するか」が変わっただけだった。

実はこの方法、オーナー自身の過去の体験に基づくものだった。若い頃、外の釜の飯を食べるためにサラリーマンとして働いていた時代、彼自身もA君と同じような遅刻魔だったという。その時、会社の社長から課されたルールが「遅刻する時は、必ず社長に直接報告すること」だった。

その経験が、自身を更生させた。そして今、若き日の自分を重ね合わせるかのように、同じプログラムをA君に課したのであった。

叱責でも罰則でもない。仕組みを変えただけで、人は変わる。そのことをものの見事に表す更生の一例だった。



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コメント[ コメント記入欄を表示 ]

  1. 上から目線で聞こえたら申し訳ないですが
    今回の記事はとても良いと思います。

    普段記事の内容にあーだこーだ言っているので、勉強になったときは
    正直に賛同もしたいと思います。
    通りがかり  »このコメントに返信
  2. ピンバック: 通りがかり

  3. 店長ならナメてもいいが、オーナーはそうはいかないと理解したって事ですね。
    定年リーマン  »このコメントに返信
  4. ピンバック: 定年リーマン

  5. 店長じゃナメられるからオーナーが出てくる。
    仕組みというか、簡単に言えば「圧」をかけるということですね。
    店長にはないもの凄い威圧、プレッシャー。
    オーナー相手に何度も「パンクしました」とか「チェーンが…」なんて言えませんもんね。
    仕組みというよりもパワープレイ、正面突破に近いです。

    人間って誰しも普通に対人にランク付けする生き物ですので有効な策ですよねコレ。
    オーナーに煩わしさがないなら遅刻だけではなく色々なミスでもオーナーへの報告を義務付けれはヒューマンエラーは減るかも?
    いや、あまり圧をかけすぎると重大なミスを隠したりするからダメかもしれませんね。
    遅刻くらいが程度としていいのかな?
    通行人  »このコメントに返信
  6. ピンバック: 通行人

  7. 評価も高く使える人材とあるので柔軟に対応すればいいですけど。外部環境で態度が変わるのは本質的な変化ではない。ある程度の年齢になり責任感が芽生えてくれば自然に遅刻しなくなる。その成長があるかどうかを見極めることですね。
    crazydoctor  »このコメントに返信
  8. ピンバック: crazydoctor

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