理由は新聞用紙など原材料費の高騰、輸送コストの上昇、人手不足、人件費の高騰、そして何より購読者の減少だ。つまり、「売れなくなったものを、高いコストをかけて運ぶことができなくなった」というシンプルな話だ。
全国紙で発行部数が最も少ない産経新聞は約79万部。東北という一つの地域から新聞そのものが消えるということは、新聞というビジネスモデルそのものが限界に近づいていることを如実に物語っている。
この構造はパチンコ業界と驚くほどよく似ている。
都内で読売新聞の販売店を50年以上経営しているある社長は、「ウチもあと10年」と話しているという。その理由は明快で、購読者の78%が高齢者だからである。
現在の購読者が高齢者中心なら、その人たちが10年後も同じように新聞を購読している保証はない。むしろ自然減によって、確実に購読者は減っていく。
この販売店でピーク時には1800部を配達していが、現在では500部まで減ったという。部数が減っているから配達が楽になるという話ではない。人件費やガソリン代、物流コストは上がっている。配る部数だけが減り、コストはむしろ上がっている。
これはホール業界にも当てはまる。
ピーク時には3000万人いた遊技人口を背景に、全国津々浦々にホールが存在した。
ところが現在は、商圏が脆弱な地方からホールが次々と消えている。
パチンコ物件ドットコムの閉店データを見ても、それがよく分かる。北海道、東北、北陸、山陰、四国、九州といった地方が目立つ。しかし、東京、神奈川、大阪、愛知といった大都市圏でも閉店が相次いでいる。
つまり、「人口の少ない地方だけが厳しい」という単純な話ではない。
地方は人口減少と高齢化が直接的に響いてくる。
一方、大都市圏では競争が激しすぎる。駅前小型店は淘汰され、郊外なら大型店同士の競争になる。人口が多いから安泰というわけではない。
新聞の場合、人口の少ない地域から販売網を維持できなくなっていく。しかし最終的には東京や大阪などの大都市圏でも、購読者減少によって販売店そのものが維持できなくなる。
パチンコも新聞も、問題は単純な「地方衰退」ではない。
市場そのものが縮小していることだ。
しかも両業界には、もう一つ共通点がある。
致命的なことは「若者を取り込めない」ことだ。
新聞業界は若者に新聞を読ませようと、電子版やニュースアプリなどさまざまな取り組みをしてきた。しかし、若者からすれば、わざわざ毎月数千円を払って電子版を読む必要性はない。スマホを開けばタダのニュースはいくらでも入ってくる。
パチンコも同じである。
若者にはパチンコ以外の娯楽が山ほどある。しかもスマホ1台で1日暇が潰せる。
問題は若者が数ある娯楽の中からパチンコを選ぶ理由が存在しないことだ。
新聞も同じである。
「新聞を読めば社会が分かる」と言われても、若者からすればスマホでニュースを読めばいい。
パチンコも「昔のパチンコは面白かった」「ハネモノこそ本来の魅力だ」と言っているだけでは、若者には響かない。
さらに厄介なのが、両業界とも既存顧客への依存度が高いことだ。
新聞は高齢者に支えられ、パチンコは高齢者とヘビーユーザーに支えられている。
ところが、既存客を守ることに集中するだけで、新規客が育たない。ホール組合自体が重要課題としながらも「新規客の開拓」というスローガンで終わっている。そして気がついた時には、既存客の減少スピードの方が、新規客の増加スピードをはるかに上回っている。
これが「衰退産業」の怖さである。
顧客が減る→売上が減る→コスト負担が重くなる→サービスを維持できない→さらに顧客が減る→閉店、という負のスパイラルに入ってしまう。
新聞の場合、それが「東北から産経新聞が消える」という形で表れた。パチンコの場合は、「地方からホールが消える」という形で表れている。
だから、今回の閉店データを見て「地方のホールが厳しい」とだけ分析するのは少し違う。地方は先に限界が来ているだけで、大都市圏も決して安全地帯ではない。
新聞がそうであるように、人口が多い都市部でも市場そのものが縮小すれば、いずれ販売店を維持できなくなる。
新聞販売店では「あと10年」という声が出ている。パチンコ業界にも、同じようなカウントダウンが始まっているように思われる。
ただし、両業界とも「なくなる」ことはない。
新聞は紙そのものを売るのではなく、情報をどう届けるかというビジネスへ変わる必要がある。
パチンコも、単に「台を設置して玉を出す」という従来型のホール経営から、遊びそのものをどう再定義するかが問われている。
結局、生き残れるのは「昔の顧客をどう引き留めるか」だけを考えた企業ではない。
「今まで自分たちを必要としていなかった人に、どう必要としてもらうか」を考えられる企業である。
産経新聞の東北撤退は、新聞業界だけの問題ではない。それは、パチンコ業界にとっても「地方から始まる衰退は、やがて都市部へ波及する」という現実なのだ。
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