このフレーズを聞けば、多くの人があの仔グマの人形が踊るCMを思い浮かべるだろう。
文明堂のテレビCMが放映されたのは昭和37年。以来、60年以上にわたってほぼ同じ姿で流れ続けている、日本を代表するロングセラーCMである。
なぜ文明堂は、時代が変わってもこのCMを変えないのか。
当時、カステラは高級菓子というイメージが強く、一般家庭へ消費を広げることが課題だった。そこで同社が目を付けたのが、当時最先端だったテレビである。
特に人形劇は子供の心をつかむコンテンツだった。街頭テレビが存在した時代、子供が足を止めれば親も一緒に足を止める。そこからカステラの認知を広げる狙いがあった。
60年以上の年月で、日本の生活様式も消費者の好みも大きく変化した。それでも文明堂は、あえて「変えない」選択をしている。理由は、老舗でありながら今も元気に営業していること、そして昔から変わらない丁寧なものづくりを伝えるためだという。
つまり、このCMは単なる宣伝ではなく、文明堂そのものを表現するブランドになっているのである。
ここでパチンコ業界である。
あるホールオーナーが、文明堂のように一度聞いたら頭から離れないキャッチコピーを作りたいと考えた。
依頼は広告代理店を通じて、有名コピーライターのもとへ届いた。
オーナーの条件は明確だった。
「一度聞いたら忘れられないキャッチコピーを作ってほしい」
さらに、そのキャッチコピーに曲を付け、ラジオCMとして繰り返し流したいという構想だった。採用されたコピーには1000万円の報酬を支払うという破格の条件まで提示された。
コピーライターにとってはオイシイ案件に違いない。しかし、本人の反応は意外なものだった。
「コピーだけでユーザーが食いつくことはない」
腕まくりして取り掛かるどころか、むしろ冷静で悲観的だった。
理由は単純だ。
どんなに美しい言葉で飾っても、世間から見ればパチンコは未だに「ギャンブル」というイメージが根強いからだ。
現在、パチンコ業界は「遊びの力で、心を元気に。」というパーパスを掲げている。しかし、その言葉が一般社会にどれだけ刺さっているかといえば、まだ十分とは言えない。
文明堂のCMが60年以上愛され続ける理由は、単にキャッチコピーやメロディーが優れているからではない。そこには「家族のおやつ」「懐かしい記憶」「変わらない安心感」という、多くの人が共有できる体験がある。
パチンコ業界に必要なのは、耳障りの良い言葉を作ることだけではない。
「なぜパチンコが存在するのか」
「遊技することで人は何を感じるのか」
その価値を明確にし、社会から共感される存在になることが先である。そのためには今のギャンブル志向からの脱却が求められる。
心に残るキャッチコピーは、言葉だけでは生まれない。
業界の実態と消費者が感じる価値が一致した時、初めて文明堂のように何十年も語り継がれるメッセージになるのである。
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