80年代から90年代にかけて多くの業界分析を的中させた人物だが、その代表的な一つがキリンビールの陥落予測だった。
1980年代半ば、キリンビールは市場シェア60%超という絶対的王者だった。
ビールといえばキリン。アサヒやサッポロは比較対象にすらならない──誰もがそう思っていた時代である。
しかし、この評論家は1987年の「アサヒスーパードライ」発売直後にこう言い切った。
「スーパードライに飛びついたのは、苦いビールが嫌いで味にこだわりの少ない若者層。一方、キリンラガーを支えているのは中高年。中高年は時間の経過とともに市場からいなくなる。実際飲んでみてもスーパードライは美味い。だからアサヒが伸びるのは必然だ」
この顧客世代の入れ替わりを読む視点こそが、彼の分析手法だった。
その後のアサヒの躍進は周知の通りだ。
いま80代となり第一線から退いた彼だが、久しぶりにパチンコ業界について語った。
その指摘は静かだが、あまりにも重い。
評論家は冒頭からこう断言した。
「パチンコはラガーと同じ。年寄りばかりで若者がいない。オワコンと言われているが、メーカーが2社連続で倒れたら一気に崩壊が加速する。メーカーが減れば年間の新台数も8~10機種減る。新しい選択肢が減るということは市場縮小がさらに加速するという意味だ」
キリンが支持層の高齢化で崩れたように、パチンコもまた同じ構造的弱点を抱えているというのだ。
彼が次に語ったのは、コマツの建設機械についてだった。
コマツの建機にはすべてGPSが搭載され、
• 稼働状況
• 稼働時間
• 位置情報
• 燃費
• 異常検知
などすべてが遠隔監視される。
その結果、
• 非効率作業の特定
• 停止時間削減
• 盗難防止
• 安全性向上
が可能となり、企業価値の源泉となっている。
これを踏まえて彼はこう言い切る。
「パチンコ業界もホールコンのデータがあるのに、それを活かす人材がいない。データ分析が偏っていて、ギャンブル好きの人が喜ぶ台ばかりを作り続けている。若者を育てる発想を読み取れる人が業界にいない」
メーカーもホールも、「昔の遊技人口3000万人」の復活を夢見ていない。むしろ諦めきっている。現状維持が精一杯だ。
その鈍化した姿勢こそが最大の問題だという。
しかし評論家は続けて、こうも語った。
「だからこそ、新規参入は大チャンスだ。イーロン・マスクのような異質な人間が入ってくれば、一気にシェアを取れる」
そのうえで彼が口にした最後の言葉は衝撃的だった。
「まず換金を捨てて考える。換金を前提にしない新しい遊技モデルを作る者が、次の覇者になる」
パチンコ業界が崩れつつある理由は、
• 支持層の高齢化
• 若者の不在
• データ活用の欠如
• 既存勢力の惰性
• 新規参入が生まれない構造
という多層の問題が積み重なっているからだ。
だが評論家は、悲観だけで終わらない。
「換金を捨てる」という最も根本的な価値転換を示し、そこにこそ業界再生の可能性を見出した。
80年代のビール市場で起きた“大逆転”を見抜いた男の言葉だけに、重みがある。
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