造幣局によると、2015年度には8200万4000枚もの1円玉が製造されたが、その後の2016年度から2025年度までは年間40万~80万枚程度にとどまっていた。それが今年度は令和に入って初めて100万枚を超える見込みとなっている。
背景にあるのは物価高だ。
キャッシュレス決済の手数料負担を嫌い、現金決済に回帰する店舗が増え始めた。その結果、お釣りとして使われる1円玉の需要が再び高まっている。
キャッシュレス化が時代の流れと言われる一方で、現実には手数料という壁が立ちはだかっていることを象徴する出来事でもある。
そんなキャッシュレスを巡る議論を見ていると、実はパチンコ業界こそ、その先駆者だったことを思い出す。
1990年4月、警察庁の主導で「全国共通プリペイドカードシステム」がスタートした。目的はホール経営の透明化と現金管理の適正化だった。
全国どこのホールでも1枚のカードで遊技できるという発想は、現在の電子マネーやQRコード決済を先取りした画期的なシステムだったと言える。
しかし、この構想は長続きしなかった。業界を震撼させた偽造カード事件である。
偽造カードによる被害は甚大で、カード会社は多額の損失を被った。これを受け、三菱系、住友系、三井系などのカード会社は次々と業界から撤退し、全国共通カード構想は事実上終焉を迎えることになった。
時代は流れ、今、業界では再びキャッシュレス化への挑戦が始まっている。その一例が6月から神戸でスタートした「PPPAY」だ。
Visa・Mastercardブランドのデビットカードを利用し、ホールのカウンターでQRコードをPPPAYアプリで読み取り、デビットカードで決済。その場でICカードへ玉やメダルの貸玉・貸メダル料金をチャージする仕組み。
さらに依存症対策として、利用上限を1日2万円、1カ月8万円に設定している点も特徴だ。
一方で、利用者は決済額の5%をシステム利用料として負担しなければならない。ホール側の負担率は0.25%と低く抑えられているものの、利用者から見れば5%は決して小さな金額ではない。
キャッシュレスは便利である。しかし、その利便性を支えるコストを誰が負担するのかという問題は避けて通れない。
一般の小売店でも決済手数料を理由に現金回帰の動きが出始めているように、パチンコ業界でも手数料は普及を左右する最大の課題となる可能性がある。
現在のキャッシュレス化は利便性だけでなく、コストとのバランスをどう取るのか。その答えを示せるかどうかが、本格的なキャッシュレス時代を切り開く鍵になりそうだ。
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