そう考えたあるホール企業は、これまで頼ってきた業界系コンサルタントでは思うような結果が出なかったことから、ついに大手外資系コンサルティング会社の門を叩いた。
依頼先は世界最大級の戦略ファームの一つだった。企業の経営陣が直面するM&A、新規事業開発、全社改革などの「最上流の経営課題」に対し、解決策の立案から実行支援までを行うプロフェッショナル集団だ。圧倒的なブランド力と、世界各国の企業改革で培った知見を持つ会社でもある。
ホール企業がこうした大手外資系コンサルを活用するケースは、業界内では極めて珍しく、今回が2例目とも言われている。
同社の特徴は、クライアントが心地よくなるような提案はしないことだ。
本当に企業を変えるためには、時に経営者が聞きたくない現実も突きつける。感覚論ではなく、ファクトに基づき、成功するために必要なことを徹底的に追求する。それが世界中の企業から依頼される理由でもある。
コンサル契約を結ぶかどうか以前に、同社が示した一つの事例が興味深い。
それは、日本におけるコーヒー文化の普及だった。
現在、日本人が当たり前のように飲んでいるコーヒーだが、一般家庭に広く浸透したのは戦後になってからである。
戦中においては、敵国文化という側面もあり、自由に楽しめるものではなかった。しかし、戦後の自由化とともにアメリカから家庭用インスタントコーヒーが輸入され始め、日本にも本格的なコーヒー文化が入ってきた。
欧米文化への憧れも追い風となり、コーヒーは一気に一般家庭へ普及していった。
さらに大きかったのが、子供の頃からコーヒーに親しむ環境を作ったことである。苦味のあるコーヒーを子供にも受け入れてもらうため、コーヒーガムやコーヒー牛乳などの商品が登場した。
その結果、子供時代にコーヒーの味を覚えた世代が大人になり、コーヒーを飲むことが生活習慣として定着していった。
つまり、市場を大きくするには、今いる顧客だけを見るのではなく、将来の顧客を幼い頃から育てる必要があるということだ。
この考え方を実践している代表例がマクドナルドだ。ハッピーセットによって子供の頃からマクドナルドを食べる機会を作り、大人になってからも自然と利用する習慣を作っている。
では、この考え方をパチンコ業界に当てはめるとどうなるのか。
答えはかなり厳しい。
なぜなら、パチンコホールは18歳未満の入場が禁止されているからだ。
コーヒーやハンバーガーのように、子供の頃から触れさせて文化として根付かせるマーケティング手法が使えない。
さらに、パチンコは一般的な娯楽産業とは異なり、射幸性を伴うギャンブル産業である。そのため、通常の消費財のようなブランド構築やファン育成の手法が、そのまま通用するわけではない。
おそらく同社が伝えたかったことは、「明日からイベントを増やせば稼働が戻る」という単純な話ではないということだ。
市場を長期的に成長させるには、将来の顧客を育てる仕組みが必要。しかし、パチンコ業界には法律や社会的な制約が存在する。つまり、稼働低迷の原因は店舗運営や広告宣伝だけではなく、業界そのものが抱える構造的な問題にある。
今回のコンサル依頼は、表面的には「稼働を上げる方法を教えてほしい」というものだった。しかし、示された答えは「今の延長線上では簡単には解決できない」という、経営者にとって耳の痛い現実だったのかもしれない。
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