カネには困らない。でも、時間は持て余している。
不動産管理という仕事は、日々やることは少ない。トラブル対応こそあれ、毎日フル稼働するような業務ではない。その“余白”を埋めるのが、Aさんにとってのギャンブルだった。
趣味は競馬とパチンコ。
週末は中央競馬をネット投票で楽しみ、平日はホールに足を運ぶ。競馬には月30万円、年間にして約400万円を投じる。収支は口座を見れば一目瞭然だが、あえて見ないようにしている。勝ち負けよりも“やっている時間”に価値を置いているからだろう。
一方、パチンコは1日3万円が目安。時間つぶしの側面が強く、朝から晩まで打ち込むわけではない。それでも月換算すれば60万円ほどの額になるが、家計に影響はない。むしろ「無駄だと分かっているがやめられない」という自覚の方が強い。
Aさんは自身を「依存症だと思う」と分析している。
ただし、一般的にイメージされる依存とは様相が違う。借金もなければ、生活も破綻しない。家庭が壊れることもない。経済的ダメージが顕在化しないため、外からは問題が見えにくい。
そんなAさんのもとに、ある日、パチンコ店の買収話が舞い込む。同業の不動産ルートからの案件だった。しかし、Aさんは即座に断った。
「客として見ているからこそ、この業界の厳しさが分かる」
遊ぶ側としての実感が、投資判断を鈍らせるどころか、むしろ冷静にさせた。
ここに一つの逆説がある。
自分では散々お金を使って遊んでいるのに、商売として関わるのは避けている。その判断ができるのは、お金に余裕があるからなのか、それとも“あくまで遊び”と割り切っているからなのか。
Aさんのようなケースは、従来の依存症像には当て嵌まらない。
金銭的に破綻しない依存――いわば「明るい依存」である。本人も無駄と理解しながら、時間と金を費やし続ける。痛みが表面化しない分、是正の動機も生まれにくい。
月100万円以上使っても揺るがない生活。
Aさんの姿は、ギャンブル依存のもう一つの顔を映し出している。
それは、破滅ではなく、静かに続いていく明るい依存である。
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