しかし、その一方で限界もある。
加盟金に加え、毎月発生するロイヤリティー。メニューや価格設定の自由度も低い。結局のところ、「儲かる仕組み」を本部に握られたままになる。
だからこそ、あるホール企業は次の段階として「自前主義」に目を向け始めた。
その会社が参考にしようとしているのが、 サイゼリヤ だった。
安くて、それなりに美味い。しかも全国どこへ行っても品質が安定している。
この異常なコストパフォーマンスの秘密を学ぶため、親族を実際に店舗へ入社させ、現場でオペレーションを学ばせているという。
サイゼリヤの強みは単なる低価格ではない。
自社工場、物流網、食材調達、メニュー構成まで徹底的に合理化された「仕組み」にある。
つまり、料理のレシピだけ真似ても意味がない。
問題は「どうすれば、その価格で利益が出るのか」というシステム設計の方だ。
同じように注目しているのが、激安スーパーで知られる 大黒天物産 が展開する ラ・ムー の198円弁当だ。唐揚げ弁当、中華弁当、メンチカツ弁当が、なぜ、あの価格で成立するのか。
その答えもまた、自社工場による大量生産と、商品数を絞り込んだ効率経営にある。
結局、格安販売を成立させるには、「大量に売る」ことが大前提になる。
ホール企業がターゲットとしているのは、自店の遊技客だった。
ホール側の分析は実にシンプルだ。
客が帰る最大の理由は「負けて財布が空になること」。その次に多いのが「腹が減ったから帰る」だった。
しかも、多くのホールには飲食店が併設されていない。
ならば、遊技を止めずに食べられる商品を作ればいい――。
そうして浮上したのが、「片手で食べられるフード」の開発構想だった。
遊技しながら食べられる。しかも安い。さらに店舗販売だけでなく、テイクアウト需要まで取り込む。もしヒットすれば、自店だけで終わらせる気はない。全国のホールへ卸すところまで視野に入れている。その規模まで行けば、製造コストを一気に下げられるからだ。
実は、パチンコ業界が絶頂期だった頃にも、「片手飯」のアイデアは存在していた。
だが、当時は本業だけで十分に儲かっていた。だから真剣に取り組まれなかった。
しかし今は違う。
本業だけでは厳しい時代になったからこそ、滞在時間をどう延ばすかが経営課題になっている。
そんな中、ある製造小売業の社長はこう断言する。
「端玉景品で円筒状のおにぎりを出したら絶対に売れる」
冗談のようで、実は本質を突いている。
パチンコ業界がこれから生き残るには、「遊技」だけを売る時代から、“居続けたくなる環境”を売る時代へ変わらなければならないのかも知れない。
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