一般的なクレーンゲームと大きく異なるのは、景品の中身である。通常のゲームセンターでは、ぬいぐるみやフィギュア、キャラクターグッズなどが中心だが、ダイナムが展開する「クレーンマート」(通称クレマ)の景品は、食料品や日用品が主体となっている。
コンセプトはスーパーマーケット型の「買い物×娯楽」。
6月20日、大阪府泉佐野市に第1号店をオープンした。店舗は閉店した旧ダイナム泉佐野店を転用している。
特徴は、景品の獲得方法にもある。
一般的なクレーンゲームはアームで景品を掴む方式だが、クレマはフックに輪っかを引っ掛けて落とす方式を採用している。コツを覚えれば比較的取りやすく、初心者でも「取れた」という成功体験を得やすい仕組みになっている。
「結構流行っている」という噂を確かめるため、オープンから3週間後の土曜日に店舗を訪れてみた。
店内に入ってまず目についたのは、カートに大量の景品を詰め込んだ利用客の姿だった。まるでスーパーマーケットで買い物を終えたような光景である。
さらに驚いたのは、筐体に投入される順番を待つ景品の段ボール箱が大量に積まれていたことだ。それだけ景品の回転が速いことを意味している。
景品は、2斤サイズの食パン、卵、人参、玉ねぎ、パイナップル、メロン、カップ麺、飲料水、お菓子、食用油、ケチャップ、トイレットペーパー、ティッシュBOXなど、まさに日常生活で使うものばかりである。
料金は1回100円。
簡単に取れる場合もあれば、何度挑戦してもあと一歩届かず、次の景品へ移るケースもある。
特に分かりやすいお得感を感じるのが、ペットボトル飲料水だ。
1回で成功すれば、6本入りの飲料水を獲得できる。1本100円換算なら、500円分の商品が実質無料で手に入った感覚になる。
店内の客層を見ると、子供連れのファミリー層から中高年まで幅広い。まさにダイナムが狙った客層が、そのまま取り込まれている印象だった。
もちろん、簡単に取れるのであれば攻略目的のプロが狙う可能性もある。しかし、食品や日用品は転売して利益を出しにくい。そのため、ゲームセンターの景品を狙うようなプロ層が入り込む余地は少ない。
ある中年夫婦は、カート3台分もの景品を獲得して満足そうな表情を浮かべていた。投資金額を聞くと「1万6000円」と答えた。
冷静に商品価格だけで計算すれば、決して得をしているとは言えない。しかし、本人たちは「これだけ取れた」という満足感を得ている。
ここにクレマの巧みな仕掛けがある。
1回で簡単に取れて大きな得を感じる商品と、何度も挑戦してようやく取れる商品を混在させることで、利用者の記憶には「安く大量に取れた」という成功体験が強く残る。
これは心理学でいう「ピーク・エンドの法則」に近い。人は体験全体の収支よりも、強く印象に残った瞬間や最後の満足感で評価する傾向がある。パチンコで負けても、負けても行くのは大勝した記憶が残っているのと一緒だ。
一般的なゲームセンターで数千円を使った場合、持ち帰るものはフィギュアやぬいぐるみなど、必ずしも生活必需品ではない。
一方、クレマでは同じ娯楽費を使って、食パン、飲料水、トイレットペーパーなど、生活に必要な商品を持ち帰ることができる。この「遊んだ結果、生活の足しになる」という感覚は、主婦層や中高年にとって大きな魅力になる。
考えてみれば、100円玉で遊ぶというスタイルは、パチンコの原点にも通じる。昔のパチンコは、今のような換金中心の遊技ではなく、玉を出してタバコや菓子などの景品を持ち帰る楽しみがあった。
ダイナムは、単なるクレーンゲーム店を作ったのではなく、かつての大衆娯楽としてのパチンコが持っていた「遊びながら得をする感覚」を、現代版として再構築しているとも言える。
クレマが単なる一時的なブームで終わるのか、それとも「遊べるスーパーマーケット」という新しい市場を作るのか。その行方が注目される。
追記
7月31日に放送された読売テレビのかんさい情報ネットTENでクレーンマートが紹介される。生中継で女の子が一発でじゃがいもをゲットするぐらい、割と簡単に景品が獲れることが人気スポットとなっている。

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