長年続けてきた“特定営業日”をやめたのである。
その店では、7の付く日――7日、17日、27日を「特日」と位置付けていた。月3回の還元日で、朝から250人ほどが並ぶ人気日だった。
しかし、オーナーは以前から強い違和感を抱いていた。
並んでいる客の大半が、いわゆるウチコ軍団や専業層だったからだ。
本来、特日とは日頃支えてくれている常連客への感謝を形にする場であるはずだった。ところが実際は、情報を嗅ぎつけた軍団が利益を持っていく日に成り下がっていた。
しかも彼らは、平常営業日に店へお金を落とすわけではない。特日だけ来て、勝ち逃げする。店にとっても、地域の常連客にとっても、決して健全な循環ではなかった。
「何のために特日をやっているのか」
オーナーは、その矛盾に耐えられなくなった。
そこで特日を廃止する代わりに、新たに始めたのが「機種別コーナー強化」だった。
例えば、特定の島だけを丁寧に使う。海なら海、ジャグラーならジャグラーといった形で、ローテーションを組みながら強化する。常連客が普段通っていれば、自然とその傾向が分かる仕組みだ。
象徴的だったのが「海の日」である。
7月第3月曜日の祝日、「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う日」に合わせ、《海物語》コーナーを大きく開けた。すると、昨年は常連客を中心に大盛況となった。
重要なのは、これがSNSや広告で大々的に煽る営業ではないという点だ。
毎日店に通っている客だからこそ、「最近この店は海を大事にしている」と空気で感じ取れる。逆に、特日だけを狙う軍団には読みにくい。
結果、軍団は徐々に消えていった。
すると、それまで軍団に食われていた利益を、本来の常連客へ還元できるようになった。そして、この営業方針転換から3カ月ほど経った頃、店の稼働は前年比で12%も上昇したという。
派手なイベントを打ったわけではない。
SNSで煽ったわけでもない。
やったことは、「毎日来る客を大切にする営業」に戻しただけだ。
この話を聞いた別のホール社長は、「なるほど」と感心したという。しかし、その次の言葉が象徴的だった。
「でも、大手が特日をやめてないのに、ウチだけやるのは怖い」
つまり、正しいと思っても、自分からは動けないのである。
しかし、業界が衰退している理由は、まさにそこにある。
誰かが先にやるのを待つ。大手の様子を見る。前例ができるまで動かない。
それでは、何も変わらない。
本当に必要なのは、「軍団に並ばれる店」ではなく、「常連客が安心して通い続けられる店」へ戻ることなのかもしれない。
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