対象となったのは、副主任以上の管理職。外部の危機管理会社を招き、研修会を開いた。
会社側が最も警戒していたのは、設定漏洩をはじめとした営業に直結する不正だ。スマホ一つで情報が拡散する時代、内部からの情報漏れは店の信用を一瞬で崩壊させる。そこで導入したのが、第三者機関への内部通報制度だった。
会社へ直接言いにくい内容でも、外部窓口なら通報のハードルが下がる。現場の小さな異変も吸い上げられる――そんな狙いがあった。
すると、ほどなくして一本の通報が寄せられる。
「店長が従業員と不倫している」
通報対象となった店長は44歳。
チェーン内でもトップクラスの実績を誇る“稼げる店長”だった。年収は1200万円。営業力も数字も抜群で、会社にとっては簡単に代えの利かない存在だった。
しかし、問題は相手が部下の従業員だったことだ。
社内恋愛とは訳が違う。立場の差がある以上、職場の風紀や公平性に影響する。コンプライアンスの観点からも、会社として見過ごせない案件だった。
もっとも、昔のパチンコ業界なら珍しい話ではない。
店長と従業員の関係など、半ば“現場のよくある話”として処理されてきた時代もあった。
だが、時代は変わった。
会社は事実確認のため、探偵事務所を使って調査を開始する。そして、決定的な証拠を押さえた。
そこで会社は店長を呼び出し、事実確認を行った。
本来なら、ここで不倫を認め、反省の姿勢を見せれば、降格処分程度で収めるつもりだったという。実績ある人材だけに、会社としても穏便に済ませたい思いはあった。
ところが、店長は完全否定した。
当然ながら、自分が探偵に尾行され、証拠を押さえられているとは思っていない。押し通せると考えたのだろう。
しかし、その瞬間に会社側の判断は変わった。
問題は“不倫そのもの”だけではなくなった。
コンプライアンス研修で、「虚偽報告や隠蔽は懲戒対象になる」と学んでいたにもかかわらず、嘘をついて逃げようとしたからだ。
結果、店長と従業員は即日懲戒解雇となった。
かつてのパチンコ業界は、“数字を作れる人間が正義”だった。多少の問題があっても、売上を上げる人材は守られた。
しかし今は違う。
売上以前に、「会社として説明責任を果たせるか」が問われる時代になった。
ナンバー1店長ですら、ルールを破れば切られる。
この一件は、業界が良くも悪くも“普通の企業”になり始めたことを象徴している。
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