店員が持ち主を確認しようとバッグの中を調べたところ、大麻のようなものを発見。さらに本人確認書類も入っていたため、ホールは警察へ通報した。
その後、バッグを受け取りに現れた選手を、待ち構えていた警察が麻薬取締法違反容疑で逮捕したことは記憶に新しい。
ホールを舞台にそんな事件があったばかりだが、今度はあるホールでスマホの忘れ物があった。
店長は持ち主を特定しようとスマホを手に取った。
通常ならロックが掛かっていて開けない。しかし、そのスマホは偶然にもロックが設定されていなかった。
店長は、持ち主を探す手掛かりがないかと操作を進めた。その過程で見てはいけないと思いながら、写真のライブラリーを開いた。
そこに並んでいたのは、女性のスカートの中を盗撮したとみられる写真の数々だった。
一目で盗撮犯が疑われる内容だった。
店長は悩んだ。
このまま何事もなかったように返却すべきなのか。それとも、犯罪の可能性を知った以上、警察へ相談すべきなのか。
最終的に所轄署へ連絡すると、警察は綿密な段取りを示した。
持ち主がスマホを受け取りに来たらすぐ通報すること。
警察は10分以内に到着する。
その間は、スマホの機種を確認したり、防犯カメラで本人確認を行ったりして時間を稼ぐ。
警察官がいきなり待ち構えていては警戒されるため、巡回中に偶然立ち寄ったように装い、「盗撮犯と人相がよく似ています。スマホの中を確認させてもらえませんか」と自然な流れで職務質問を行う――という筋書きだった。
計画はほぼ予定通りに進んだ。
しかし、想定外の出来事が起こる。警察がスマホの確認を求めた瞬間、男は突然走って逃走したのだ。
もちろん逃げ切ることはできなかった。その場で取り押さえられ、捜査の結果、盗撮の常習犯だったことが判明した。
結果だけ見れば一件落着である。
ただ、この出来事は店長に一つしこりを残した。
持ち主を探す目的とはいえ、スマホの中身を勝手に見る行為は、状況によってはプライバシー侵害や民事上の責任を問われる可能性がある。
今回は偶然、重大な犯罪の発覚につながった。だから結果的には社会正義にかなった行動だったと言えるかもしれない。
しかし、それはあくまでも結果論だ。
もし写真フォルダーに何の問題もなく、単なる家族写真やプライベートな画像しか入っていなかったらどうだったのか。
「持ち主を探す」という目的を超えて、写真フォルダーまで開いたことは本当に適切だったのか。
店長は事件解決を喜ぶ一方で、その一線を越えてしまったことへの葛藤も抱えていた。
ホールには日々、財布やスマホなど多くの忘れ物が届けられる。
その対応一つにも、個人情報保護と犯罪防止という二つの価値が交錯する。
今回の一件は、忘れ物対応の難しさと、現場が常にコンプライアンスとの間で判断を迫られている現実を物語る出来事だった。
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