狙いはパチンコ番組を制作し、それを通じてホールへの集客につなげる。かつて地上波のゴールデンタイムにパチンコ番組が放送された時代なら、十分に成立した発想かも知れない。
しかし、この話を聞いた時から、この計画には疑問符が付いていた。
そもそもBS放送はどれほど普及しているのだろうか。
NHKの衛星契約率は全契約者の約53%とされる。BS・CS放送を視聴できるペイテレビ全体の普及率は全世帯の23.5%程度に留まっている。しかも若年層を中心にテレビ離れは年々加速している。
そんな状況で、パチンコ番組をBSで放送したところで、果たしてどれほどの集客効果が期待できるのか。業界関係者の間でも疑問視する声は少なくなかった。
そして最近、新聞記者から興味深い話を聞いた。
BS放送を計画していたパチンコ業界関連企業の案件は、すべて白紙撤回になったという。
スポンサーには遊技機メーカーを想定していたが、メーカーにそんな体力は残されていなかった。
折しも、民放各社がBS4K放送から相次いで撤退するニュースも流れた。
4K対応テレビは普及したものの、専用コンテンツの制作費は高額で、広告収入が全く追いつかない。各局とも年間数億円規模の赤字を抱え、事業として成立しないと判断したのである。
冷静に考えれば当然の結果だろう。
今や人々の可処分時間を奪っているのはテレビではなくスマホやネットだ。
動画を見るならYouTube。ライブ配信ならTikTokやInstagram。情報収集も娯楽もスマホ1台で完結する。
パチンコ業界が今さら衛星放送に活路を求めること自体が、時代の流れを読み違えていたと言わざるを得ない。
それどころか、ホールではもっと深刻な現象が起きている。
遊技中の客がスマホ動画を見続けているのだ。リーチ演出中も視線はスマホに向いている。
理由は簡単だ。演出が退屈だからである。ノーマルリーチが始まっても期待感はなく、結果もほぼ分かっている。だったら動画を見ていた方が面白い。
この状況を危機と捉えたメーカー側も、新たな方向性を模索し始めている。
その一つがスマホとの連動機能だ。
遊技機の液晶画面の一部にスマホ画面を表示させたり、Bluetooth機能を搭載してワイヤレスイヤホンと接続したりする構想が検討されている。
ユーザーは、台の演出音を臨場感たっぷりにイヤホンで楽しめるようになる。
実現すれば店内の騒音問題の改善にもつながる可能性がある。
もちろん、これだけで業界が復活するわけではない。
しかし少なくとも、BS放送に夢を見るよりは現実的だ。
重要なのは、ユーザーが今どこにいるのかを見誤らないことだ。
かつて業界はテレビCMに莫大な予算を投じた。
そして今、ユーザーの視線はテレビからスマホへ完全に移った。
にもかかわらず、テレビの延長線上で集客を考えているようでは話にならない。
パチンコ業界が向き合うべき相手はBSの視聴者ではなく、目の前でスマホを見ながら遊技しているユーザーなのである。
BS計画の白紙撤回は失敗ではない。
むしろ、時代の変化に気付くための授業料だったのかも知れない。
※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。