しかし時代は変わった。客からの理不尽な要求や暴言によって従業員の心が傷つき、離職につながるケースが増加。「カスタマーハラスメント(カスハラ)」という言葉が定着し、いまや社会問題として認識されている。
こうした流れを受け、2025年6月に成立した改正労働施策総合推進法では、2026年10月1日から企業規模を問わずカスハラ対策が義務化されることになった。
企業には、基本方針の策定と周知、相談窓口の設置、被害発生時の迅速対応、さらには従業員教育や録音・録画といった具体的措置が求められる。つまり「お客様第一」の時代は終わり、従業員を守る経営が問われる時代に入ったと言える。
そんな中、ある週刊誌が飲食店や小売店、そしてパチンコホールを取材したところ、記者が最も強く感じたのは「ホール業界のカスハラ対応の成熟度」だったという。
なぜホールが一歩先を行っているのか。その理由は業態の特殊性にある。パチンコ営業は、極論すれば「負ける客」によって成り立つビジネスだ。それゆえ昔から「もっと玉を出せ」「遠隔をしているのか」といった不満やクレームが日常的に発生してきた。他業種と比べても、顧客の怒りを招きやすい環境にある。
そのためホールでは、クレーム対応は特別な業務ではなく“日常業務”として鍛えられてきた。感情的になった客への対応、言葉の選び方、距離の取り方――そうした現場対応力が自然と蓄積されている。
いわばカスハラ対応の“実地訓練”を長年積んできた業界でもある。
さらに特徴的なのは初動の速さだ。飲食店や小売店では、責任者がなかなか出てこないことで火に油を注ぐケースも少なくないが、ホールではトラブルの兆しがあれば即座に店長クラスが対応にあたる。
問題が小さいうちに芽を摘むことで、深刻化を防いでいる。このスピード感こそが、結果的に従業員を守ることにもつながっている。
もちろん、ホール業界にも課題はある。しかし少なくとも「カスハラとどう向き合うか」という点においては、他業種が学ぶべきポジションにあるのは確かだ。
「お客様は神様」という言葉の裏には、過剰な迎合というリスクも潜んでいた。これからの時代に求められるのは、顧客と従業員の健全な関係性を築くこと。そのヒントは、皮肉にもクレームの最前線に立ち続けてきたホールの現場にあったとも言える。
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