最大の壁は決済事業者の存在だった。ギャンブル性を持つ業界であることから、協力する企業が見つかりにくかったが、日遊協の西村拓郎会長は6月15日の総会で、GMOグループの決済事業会社が担うことを明らかにした。2027年12月末までのシステム構築の完成を目指しているという。
実際の運用では、銀行口座直結型のスマホ決済サービス「Bank Pay(バンクペイ)」が有力視されている。
利用者は専用アプリをダウンロード。銀行口座を登録し、台間ユニットに表示されたQRコードを読み込んで金額を入力し、貸玉が利用できるイメージだ。
バンクペイは事前チャージは不要で、口座残高の範囲内でしか利用できないため、借金を伴う心配はない。クレジットカード決済に慎重な全日遊連としても受け入れやすい方式といえる。
これが実現すれば、ホール内で現金を持ち歩く必要はなくなり、パチンコ業界も本格的なキャッシュレス時代へと突入することになる。
しかし、この流れを別の角度から見ている人がいる。
造幣局OBだ。
彼が注目しているのは、パチンコ業界のキャッシュレス化によって「500円硬貨の需要がどう変化するか」である。
実は近年、日本国内で発行される硬貨の枚数は減少傾向にある。電子マネーやQRコード決済の普及によって、小銭そのものを使う機会が減っているのは周知の通り。
ところが、その中で予想外の動きを見せている硬貨がある。
それが100円硬貨だ。
キャッシュレス化が進めば100円硬貨も不要になると思われていたが、現実は違った。
理由はガチャだ。
駅中、商業施設、家電量販店、ショッピングモール――街中のあらゆる場所にガチャコーナーが設置され、その人気は衰える気配がない。
「両替してでも回したい」
そんな需要が100円硬貨を支えている。
キャッシュレス決済が普及しても、ガチャ文化が続く限り100円硬貨の需要は簡単にはなくならないというわけだ。
では500円硬貨はどうか。
造幣局OBによると、現在でも500円硬貨が大量に流通する場所の一つがパチンコホールだという。
カード精算機時、お釣りとして500円硬貨が払い出されるケースは珍しくない。
つまり、パチンコホールは知らず知らずのうちに500円硬貨の流通を支える役割を担っているのである。
しかし、ホールのキャッシュレス化が進めば話は変わる。
現金を使わなくなれば、お釣りとして500円硬貨が払い出される機会も減少する。
すると、500円硬貨の主要な流通経路の一つが失われることになる。
100円硬貨にはガチャという強力な需要先がある。
しかし、500円硬貨には、それに匹敵する受け皿がまだ存在しない。
一部では500円専用ガチャも登場しているが、数は限られている。もし将来的に高額商品を扱う500円ガチャが一般化すれば話は別だが、現状では主流とは言い難い。
パチンコ業界のキャッシュレス化は、遊技環境を大きく変えるだけでなく、思わぬところにも影響を及ぼす。
その一つが500円硬貨の存在だった。
業界関係者の多くは、キャッシュレス化による利便性や依存対策に注目している。しかし、造幣局OBの目には、別の景色が見えている。
パチンコホールから現金が消える日。
それは同時に、500円硬貨の居場所が一つ消える日でもあるのかも知れない。
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