彼らがパチンコを覚えたのは高校時代。今では考えられない話だが、当時はそんな“緩さ”もあり、安月給でも気軽に遊べる娯楽だった。ところが今は様相が一変している。
「再雇用になって手取りは18万円まで下がったよ」
誰かが口にすると、全員が苦笑いでうなずいた。定年延長で働けるとはいえ、期限はあと2年余り。収入は大幅ダウン。小遣いも削られ、自由に使えるおカネは限られる。そんな中で、真っ先に無駄を省いた先がパチンコだった。
「こんな給料じゃ打てないよな」
一人がそう言うと、全員が同調する。気づけば、5人とも定年延長を機にパチンコから足が遠のいていた。
「1~2カ月も行かなければ、行きたい気持ちもなくなるもんだな」
「勝てないと分かっていて、1パチを打ってた時期もあったけどな」
「俺は家にまっすぐ帰りたくなくて寄ってたんだよ。帰ると“洗い物しろ”って言われるからさ」
かつてパチンコ店は、彼らにとって“時間つぶし”であり、“家庭からの避難所”でもあった。しかし、収入減という現実の前では、その役割も終焉を迎えた。
では、彼らは空いた時間とおカネを何に使っているのか。
答えは共通していた。安く飲める居酒屋である。いわゆる大衆酒場に立ち寄り、軽く一杯やってから帰る。それが新たな習慣になっていた。
「パチンコより安く済むしな」
「飲んでる方が気楽だよ」
さらに冗談交じりに、こんな声も上がる。
「居酒屋に無料で打てるパチンコ台があれば最高だな。1時間300円くらいなら払ってもいい」
この一言は、今の業界にとって見逃せない示唆を含んでいる。彼らが求めているのは、勝負ではなく“時間を潰せる遊び”であり、なおかつ低コストであることだ。
かつてパチンコは、そのポジションを担っていた。しかし現在は、万札が熔けるスピードの速さや勝率の低さがハードルとなり、“気軽な暇つぶし”からは遠ざかって久しい。
結果として、安居酒屋がその役割を果たしている。酒を飲みながら時間をやり過ごす――ただそれだけのことが、彼らにはちょうどいい。
この還暦世代の変化は、単なる一例ではない。可処分所得が減る中で、「いかに安く時間を過ごすか」という価値観は、今後ますます強まるだろう。
パチンコが再び“時間つぶしの王様”に返り咲くことはあるのか。それとも、このまま居酒屋にその座を明け渡すのか。
答えは、遊び方そのものをどこまで変えられるかにかかっている。
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