6月10日付のヤフーニュースによると、世界最大級のコーヒーチェーンであるスターバックス が、日本事業の株式売却を含む複数の選択肢を検討しているという。日本は同社にとって最大級の海外市場の一つであり、約2100店舗を展開している。その日本法人が売却される場合、取引額は4000億~5000億円規模に達する可能性があるとも報じられている。
報道ではここまでだが、ある情報筋によると、買収先候補としては日本でも通信や自動車など大企業の名前が取り沙汰されているほか、大手ホール企業も含まれている、という。
実際、ホール企業の中には飲食事業を展開している企業もある。しかし、その多くはホール利用客を主な対象とした事業であり、全国ブランドとしての知名度は限定的だ。
もしスターバックスを手に入れれば、一夜にして全国ブランドを傘下に収めることになる。
もっとも、本当に注目すべきなのは「誰が買うか」ではなく、「なぜ売却が検討されているのか」という点だ。
その背景には、アメリカ本土の業績が芳しくなく、赤字を補填する意味合いもあるが、日本独自の喫茶店文化の復権があるようにも見える。
かつて日本にはフルサービス型の喫茶店が溢れていた。ピーク時の1981年には全国で15万5000店を超えていたとされる。
しかし90年代後半になると、スターバックスや タリーズコーヒー といったセルフサービス型コーヒーチェーンが日本へ上陸する。
「オシャレ」「都会的」「手軽」という新しい価値観は若い女性を中心に支持を集め、街の喫茶店は次々と姿を消した。
2011年には喫茶店数は約7万5000店まで減少。まさに半減である。
当時、 銀座ルノアール 関係者が「フルサービス型喫茶店は絶滅危惧種」と語ったのも無理はなかった。
ところが状況はそこから一変する。
転機となったのが コメダ珈琲店 の全国展開だった。
名古屋発祥のローカルチェーンだったコメダは、東北や九州など全国へ出店を加速。郊外型店舗を武器に勢力を拡大していく。
そして、このタイミングで定年退職を迎えた団塊世代が市場に現れた。
彼らは高度経済成長とバブル期を経験した世代であり、現役時代には喫茶店文化に慣れ親しんできた。
セルフサービスで席を探し、商品を受け取るスタイルよりも、席に座ってゆっくり注文し、会話を楽しめるフルサービス型の方が居心地がいい。
しかも時間もある。
コーヒー一杯だけで終わらない。
モーニングを食べ、ランチを食べ、時には孫を連れて来店する。
結果として、1人の利用が家族消費へと広がる。
コメダの成長は単なる店舗戦略の成功ではなく、「アクティブシニア市場」を掴んだことが大きかった。
その流れに乗って、 星乃珈琲店 や 銀座ルノアール なども存在感を高めている。
つまり、日本のコーヒー市場では、セルフサービスがフルサービスを完全に駆逐したわけではなかった。
むしろ高齢化社会の進展によって、フルサービス型が再評価されるという逆転現象が起きている。
この構図はパチンコ業界にも通じる。
業界は若者獲得ばかりを追いかけるが、実際にお金と時間を持っているのはシニア層だ。
コメダが団塊世代の需要を掘り起こしたように、パチンコ業界もかつてのファン層を呼び戻す仕掛けを真剣に考える必要がある。
スターバックスの日本事業売却が現実になるかどうかはまだ分からない。
しかし、そのニュースの裏には、日本市場の主役が若者からアクティブシニアへと移りつつあるという、大きな時代の変化が隠れているのかもしれない。
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